グレイス・ペイリーの短編集2冊





村上春樹氏がぞっこん惚れ込んで翻訳したという、アメリカの女性作家の短編集2つ。村上作品を読んだことがない私には「なるほど」と思うことはできませんが。


『人生のちょっとした煩い』の方は面白かったですよ。これといったことが起こるわけじゃないけどへんてこな日常。そもそも日常ってそういうものなので、「日常を素直に書いた」と言うべきでしょうか。
また、文章は一見風変わりだけど、実はたいへん現実的な印象です。著者は母親でもあるせいかもしれません。


『最後の瞬間のすごく大きな変化』の方は、一言で言うと、途中で飽きました。
「女性だったら『そういうこと、口に出して言うほどじゃないけど、よくあるわね』と思う話」の連続なので、ちょっとめんどくさくなったかな。


近頃さまざま刺激が多すぎて、少しくたびれました。その状況で読むにはいい本だったと思います。
登場人物の女性たちは皆、心が死にかけてたり、死ぬほど疲れてたり、昔の夫にバカにされたり、子どもたちに手を焼いたり、なにかと残念な人生が、うんざりするほど変化なく続いてたりするわけです。


ああそうだこれが生活、日常生活ってそんな「静かな怪物」だったよね、と思い出すことができた、という意味で。