東京電力・奈川渡ダム周辺(長野県)

東京から車で飛騨高山市へ向かう際、中央道を松本ICで降りて梓川*1 沿いに国道158号線を走ると、東京電力の「梓川3ダム」*2に出会います。
奈川渡ダム周辺の地図(PCならスクロールOK)


だんさん実家が高山市なもので、たまに通るのですが、先週、少し写真など撮ってきました。
スマホで撮ったしょぼい写真と、奈川渡ダム周辺のことなどを少し。


松本に近い方から、まず稲刻[いねこき]ダム。


次に水殿[みどの]ダム。


3ダムのうち最も上流にあり、最も大きいのが奈川渡[ながわど]ダム。国道158号線はこのダムの堤の上を通り、梓川を渡ります。


高さは155m。ダム下流を覗き込むと、目のくらむような高さ。下の方にちらっと見えるのが安曇発電所です。


今回、大地震で崩れた土砂がダム湖に流れ込み、水がダムを越えないか、東京電力がシミュレーションすることになりました。4月10日付信濃毎日新聞が伝えています。信濃毎日新聞記事
東京電力がこういうシミュレーションをするのは「初めて」だそうです。


水がダムを越えると、堤体や岸が壊れ、下流に大災害を引き起こす可能性があります。
2008年の岩手・宮城内陸地震では、荒砥沢ダム上流の山が崩壊し、越流寸前でした。今回の調査もこれをうけてのことのようです。
川の日記「岩手・宮城内陸地震と荒砥沢ダム」(2011年4月6日)




■地すべり、土砂崩れ、断層帯のこと
地図を見ると、奈川渡ダムは梓川の南側から奈川*3 が合流する地点にあることがわかります(下の地図はスクロールしません)。



東京電力がシミュレーションするのは、ダム湖右岸の、大規模な地すべり地形のある山が崩れた場合です。上の地図中心の十字形の、右上あたり。


奈川の地すべり地形は、防災科学技術研究所「地すべり地形分布図データベース」で位置を確認することができます。奈川渡ダム周辺の地すべりマップ
地すべり地形がどんなものかは、同研究所の「地すべりとは?地すべり地形とは?」のページがわかりやすいと思います。


また、奈川渡ダム近辺には「境峠・神谷断層帯」(地震調査研究推進本部)があり、それに沿って破砕帯があります。*4


下は奈川渡ダムを通過して上高地入口(釜トンネルの手前)へ向かう途中、梓川右岸の写真です。
手前のガードレールの向こうに梓川があり、さらにその向こう岸がこういう状態です。前見たときよりひどくなってるみたいな。気のせいかしら。


一番大きな岩で、見たとこ小型トラックぐらい? 恐がりなので、いつもお祈りしながら通ります(助手席でスカピースカピー寝てる場合を除く)。
このあたりは、アカンダナ山、焼岳*5といった活火山地帯です。安房トンネル工事中、死者4名を出す水蒸気爆発が起きたのも、このあたりです。


昨年は豪雨で左岸(道路のすぐ脇)の「ワラビ沢」が崩れ、しばらく国道が不通になりました。ワラビ沢は、上記写真の向かいあたりです。
先週通ったときも、ゴールデンウイークを前にあちこち復旧工事中でした。*6





■鉱山跡のこと
山深いところは、鉱山、鉱山跡も多いみたいです。


奈川渡ダムから南側の奈川を遡ると、右岸に「ミヤ沢」という支流があります。
ミヤ沢にはかつて奈川鉱山がありました。


2008年には、鉱山由来と思われるヒ素松本市奈川地区の簡易水道に混入して、給水停止になったことがあります。

奈川東側地域には砒鉄鉱を含むペグマタイト、石英脈が分布する、という地質特性に加えて、ヒ素の、鉱物から水への溶解を一層促進させた原因として、断層破砕帯の存在が考えられる。奈川東側地区、古宿付近には大活断層である境峠断層(仁科、1982)が南北に走っている。境峠断層にそって、破砕帯が幅広く(断層の前後1km程度)発達している(中島・大塚、2008)。破砕帯では岩石の破壊が著しいため、岩石中の砒鉄鉱が変質し、鉱物からヒ素が溶脱しやすくなっているものと推測される。
「松本市奈川簡易水道における、ヒ素濃度水質基準値超過の原因」信州大学理学部地質科学教室・森清寿郎氏(2008年/PDF)より引用。


■新しい送電線?
確か水殿ダムを過ぎたあたり、正面の山の頂に、新しい送電線が通ったような気がします。
山頂の森にくっきりと切れ目がついて、鉄塔が建ってて、おや?と思いました。切り出した木材を積んだトラックともすれ違いました(写真は撮れませんでした)。


原発が使えないとなれば、電力会社間で電力を融通し合ってやりくりするために、送電線網を増強するはずです。確か去年、そんなニュースも聞きました。
そのために新しい送電線を引いてるのかしらーなんて思ったのですが。確証はありません。

*1:信濃川の支流・犀川の、奈良井川との合流点から上流を梓川といいます。上高地河童橋の下を流れている川です。

*2:稲刻、水殿、奈川渡の各ダム。

*3:この川を遡ると野麦峠

*4:断層破砕帯についてはWikipedia断層破砕帯」など参照。また、行動の良否はさておき「 国道158号旧道 水殿ダム〜奈川渡ダム」は、このあたりの崩れやすさの参考に。

*5:焼岳の大噴火により梓川がせき止められ、大正池ができたのは有名な話。

*6:上高地などの観光地へのアクセス道ですから、シーズン中は観光客で大混雑します。