藤沼ダムの決壊について

3月21日の「川の日記」で、東日本大震災で決壊した福島県の藤沼ダムについて、「ほとんど堰みたい」なんて書きました。
これ、まるでちっちゃい段差程度、みたいな印象を与えそうです。


が、改めて考えたら、高さ18.5mって、決して小さな構造物ではありません。5〜6階建てのビルほどもある。
現場を見ないでええ加減なこと言ってるってことですね。いけませんね。反省。


今回、きちんと現場を見て書かれたルポルタージュを読みました。
今月発売のFlyFisher誌8月号、『川の問題点』で、浦壮一郎氏が「藤沼ダムの決壊」を取材されています。


5ページにわたるルポルタージュです。現状を伝える写真も多数あります。
釣り人のみならず、たくさんの人に読んでほしい。

…ダム事業を揺るがす重大な災害だといえるわけだが、それすらも津波原発にかき消されたことになる。いってみれば、福島原発の事故が今後の原発事業に急ブレーキをかける重大事故であるように、藤沼ダム決壊も「今後のダム建設は、今あるダムはどうするのか」という議論に発展してもおかしくない一大事だったはず。…


…絶対に安全といってきた原発と、決壊するはずがないといわれてきたダム。決壊しないのなら補償問題に発展するはずもない。それがこれまでのダム行政だった。
  ところが現実には決壊しただけでなく死者も出してしまった。今後は補償のための法整備が不可避となるはずだが、このまま津波被害の陰に埋もれてしまえば国を挙げての議論にはなりにくいだろう。まさに忘れられた災害、いや「忘れられた人災」なのである。


FlyFisher誌2011年8月号「藤沼ダムの決壊」(文・写真/浦壮一郎氏)より


ところが世の中には、「貯水池はダムのうちには入らない」とおっしゃる「防災の専門家」もいらっしゃるんですね。
→【参考】「ダムのはなし」(Amazonサイトへリンクしています。)


農林水産省によれば藤沼湖は「ため池」です。
2万5000分の1地図の表記も「藤沼湖」(Googleマップでは「藤沼貯水池」)のみ。湖へ水を供給する、あるいは水が流れ出る沢は小さく、地図上に記載がありません。
地図だけ見れば、天然の湖みたいです。


しかし、沢が小さかろうと、構造物をどんな名で呼びかえようと、人が、流れる水をせき止めて造ったものが、大震災により決壊して、人命が失われた。それはまぎれもない事実です。


藤沼ダムはアースフィルダム*1でした。浦氏によれば、日本に今あるダムでは最も多い工法だそうです。
そして、「具体的な基数はもはや把握が不可能といわれ、1000基とも2000基とも指摘されているのだ」そうです。

*1:台形状に盛り土をして堤を形成するダム。