灯台守の話




これはまさしく物語、としか言いようがない物語。「物語」のない「小説」にあまり興味のない私には、思いがけず出会った御馳走のようでした。
あらすじは…母を失って灯台守のところへ少女シルバーが…なんて、語るのがむなしい気がします。なんでかな。


物語というのは、あらすじを説明しても意味がないですね。現在進行している人生のあらすじを語るのが不可能なのと同じように。
絵に描かれたリンゴが実際のリンゴとは全然違ってもリンゴであって、しばしば現実のリンゴより魅力的、みたいな。


思い出したのはスティーヴ・エリクソンの『黒い時計の旅』や、リチャード・ブローティガンの『愛のゆくえ』。それぞれ全然ちがうテイストですが、私にとってはすべて御馳走ということで。


お話して、ピュー。


どんな話だね?
ハッピー・エンドの話がいいな。
そんなものは、この世のどこにもありはせん。
ハッピー・エンドが?
おしまい(エンド)がさ。



(『灯台守の話』より)