別当川・寒霞渓と新内海ダム

川の地図」の更新やら訂正やらもせねばと思いつつ、気になっている川のひとつ、別当川のことを少し。


小豆島の別当川にある、内海(うちのみ)ダムの規模は、比較的小さなものです。
しかし、現状では洪水調節容量が小さすぎると、新内海ダムが計画されました。1970年代に下流で洪水被害が続いたのだそうです。


別当川の上流には名勝・寒霞渓(かんかけい)があります。
こんな感じの美しい場所です。奇岩と紅葉の名所として知られています。



さて、現在進行中の新内海ダムは、現内海ダムをまるごと沈めてしまう、大きなもの。
当然、景色は一変します。造る側は景観に配慮すると言いますが、*1 別当下流から見上げる寒霞渓の景観を損なうという意見もあり、賛成派と反対派の対立が続いています。


参考:内海ダム再開発の行方四国新聞社/2005年3月27日)


しかし計画は着々と進行中。政権が替わっても進行中です。事業主体が香川県だから、だそうです。*2
この11月22日には、県収用委の裁決による土地の明け渡し期限を迎えました。測量や木の伐採など、現実の工事の準備に入ったということです。


小さなダムがダメになったから、それを沈めるほど大きなダムを造る、という工事は、さほど珍しくないようです。
たとえばこんなダムです。*3

  • 岩手県胆沢ダム(石淵ダムが沈む)…2013年完成予定。
  • 北海道・夕張シューパロダム(大夕張ダムが沈む)…2013年完成予定。
  • 青森県津軽ダム(目屋ダムが沈む)…2016年完成予定。


沈んだダムは水底で土砂をせき止める役割を果たすんだそうです。ほんとですか。
老朽化して土砂がたまりまくってるダムを水底に沈めて、土砂をせき止める役割を担わせるって、どうなんですか。壊して片付けるにはお金がかかるから、沈めてしまえ、みたいに見えますが。
新しい大きなダムには、もう土砂はたまらないのでしょうか。将来、そのダムが老朽化したら、もっと大きなダムを造るのでしょうか。


2008年の岩手・宮城内陸地震では、二迫川(にはさまがわ)の荒砥沢ダム上流で山がごそっと崩れ、ダムに大量の土砂が流れ込みました。
土砂のせいで津波まで起きたそうですが、水がダムを越えず、決壊もしなかったのは、単なるラッキーです。
また、同地震では、上記胆沢ダムに沈む予定の石淵ダムが変形し、漏水しました。これも決壊しなかったのはラッキーでした。*4


素人考えですが、ダムという施設は、構造物としてはかなり無理の多いものだと思うのです。
川という字面を見ても、川は水が流れてこそ川。それをせき止めるものに、無理がないわけがない。
加えて、この狭い国に、いまだに異常な数のダムが造られ続ける現状を、おかしいと思わない方がおかしい。


災害の防止、生活の向上、雇用の創出、産業の振興──ダムを造るときには必ず言われますが、ダムだけが解決方法なんでしょうか。
ダムができなきゃ、きれいな道すら通らないというしくみは、もうどうにもならないのですか。


別当川・新内海ダムの問題、なかなかメジャーなニュースには登場しません。
土地の方々がよい選択をなさることを祈るのみですが、同じ国に住む者として、このダムは造らない方がよいと思います。景観も大事ですが、景観の問題だけではありません。

*1:たとえばロックフィルダムを景観にマッチして美しいと言う人もいます。

*2:総事業費約185億円のうちうち約91億円は国の補助金だそうです。

*3:これらのうち胆沢ダムの現場は、通りすがりに見たことがあります。それはそれは大きなダムです。何十トンもの土砂を運ぶ超大型ダンプカーが、豆粒のように見えました。

*4:確か石淵ダムでは作業員の方が亡くなっています。残念なことです。