理由なんかわからない

今日、仕事場から帰ろうとしたところに、友人から電話がありました。お兄様が自ら死を選んだということでした。友人は気丈な人なので取り乱すこともなかったけれど、やはり誰かに聞いてもらいたかったのだと思います。
お兄様の決断の理由は、一言で言えば事業の失敗。やりきれません。


長々生きてくると、こういった死の知らせに接することも初めてではありません。しかし、思い返せば、どの場合も、「一言で言えば」言えるような理由で、それなりの知性も情もある人が自ら死を選ぶとは思えませんでした。


うまく言えないけれど、ぎゅうぎゅう詰めの部屋にいて、人に押されて軒から外へはみ出したら、あいにく大雨が降ってきた、みたいなことが、多いような気がしてなりません。


理由など、誰にもわかりません。本人にだってわからないかもしれない。


ただ、身近な人にとってはこれほど悲しいことはない。理由がわからないから、なお悲しいのです。それだけは確かです。