瀬戸大橋と主婦




もはや伝説のNHKのTV番組「プロジェクトX−挑戦者たち」に登場したリーダーたちの言葉をまとめた本。
番組自体、初期の方はほとんど見ました。だから、このダイジェスト本を読んだだけで、「かっぜのなかのすっばるぅ〜」という歌が脳内に響き、目がうるうるしそうになりますね。


そりゃもう、立派な方々がたくさん出てきます。立派すぎて、自分の人生の参考にするのも無理ってぐらいです。


中でも「この人は心底すごかった」と、今も時々思い起こすのは、瀬戸大橋建設プロジェクトの指揮官であった杉田秀夫さんでした。


世紀の難工事をやり遂げたのはもちろんすごいことですが、私の尊敬どころは、そこからは少しずれています。


まず、杉田さんが、幼い娘3人を残して亡くなった奥様の代わりを立派に務めたこと。そして、人生の価値は、大きな橋を造ったことで測れるようなものではないと、はっきり自覚されていたこと。
この2点において、この人は、人として本当に立派だと、心から敬意を抱きました。

橋を作る経験が人より余計にあったからといって、これは人生の価値とは全く別のことなんです。人生の価値とは何か、偉大なる人生とは、どんな人生を言うのか。これは非常に難しい問題なんです。瀬戸大橋を作るより、はるかに難しい問題です。(母校丸亀高校での講演より)


しかし。
当時の番組内でもそう、この本でもそうなのですが、「瀬戸大橋を作るより、はるかに難しい問題」って何か、が、いま一つわかってないんじゃないかと疑っております。「日々の家事よりは瀬戸大橋建設の方が立派だ」という、無意識の前提があるんじゃないですか。そんな気がします。


そこが大間違いだということを、杉田さんはちゃんと知っていたと思います。だからこそ、日常の家事をおろそかにしなかった。


まあ、女だからそう思うんだろうと思う人も多いでしょうね。わからない人にはわからないんだろうな。


話はややそれますが、私など結婚も遅く、子どもも持たず、いわゆる「仕事」ばっかりしてきましたので、兼業主婦としてすらエセ、アマチュア、落第生です。
そんな自分が普段から一番尊敬しているのは、実は「普通の主婦(主夫も含む)」と呼ばれる職業です。


他の職業と同様、デキル人もデキナイ人もいるでしょうが、ほぼ一生終わりなく続き、総合力が必要*1で、子どもがいる場合はその責任も非常に重い、「普通の主婦(主夫)」という職業。
もっと尊敬されていいし、もっと誇りを持ってもいいとずっと思っています。憧れの職業でもあります。

*1:特にここが重要かと。すなわち総合力です。現代では専門知識の方が重要視されますが、総合力なくしてヴィジョンは描けない。よって専門知識の生かし方を誤る。