閉じた本/青い野を歩く




近頃読んだ本で、思い出せた2冊。
『閉じた本』は語りの詐術でサスペンスを誘うタイプだから、叙述トリックミステリの一種かもしれません。
が、元祖『アクロイド殺人事件』などに比べると、いまひとつ低レベルな感は否めない、と思います。
簡単に裏が読める上に、話が無意味に汚いところがある。これは趣味というか、素養というか好みというか、そういう問題かもしれません。



『青い野を歩く』は、不思議な魅力に満ちた短編集でした。
アイルランドの作家だそうですが、まさにアイルランドの風土がこういう作風を生んだのではないかと(アイルランド行ったことないんで想像ですけど)。
荒涼として、冷たく寂しく、しかし何か神話のような不思議なにおいがする、痩せた土地。海。小さな地位や財産への執着を捨てきれず、死ぬほど人恋しいのにどうしても隣人を愛せない人たち。
登場人物の中で唯一幸せなのは、表題作『青い野を歩く』に出てくる、中国人らしき異邦人だけというのも、皮肉な話でした。