岩手・宮城内陸地震と荒砥沢ダム
ふと思い出したので、岩手県二迫川(にはさまがわ)、荒砥沢ダム上流の岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日発生)による大規模地すべりについて書いた、2010年11月25日の日記*1の補足を少し。
荒砥沢ダムの概要と、上流の地すべりの規模は以下のとおり。
●荒砥沢ダム概要施設規模総貯水量13,850,000立方m(有効貯水量12,840,000立方m)
洪水調節容量3,500,000立方m 洪水期利水容量9,340,000立方m
堤高74.4m 堤長413.7m 堤体積3,048,000立方m
●地すべりの規模延長約1.3km、幅約800m、最大落差150m、崩壊土塊約67,000,000立方m
岩手・宮城内陸地震の翌々日、京都大学防災研究所は「岩手・宮城地震による斜面移動現象/荒砥沢地すべりの概要予察」(PDF)という文書を出しています。*2
これは、タイトルに「概要予察」とあるように、現場へ行く前に「荒砥沢の地すべりについて、メディアの報道、地形図、発生前の空中写真を分析して、その発生メカニズムについて考察」したものです。
この中に、荒砥沢周辺には、過去に起きた地すべりによる地形が4カ所見られ、今回の地すべりは過去と同様、「下方の両岸からの尾根に衝突し、停止した」ものであるという記述があり、最後は「これらの尾根がなければ、大量の土砂が貯水池に突入し、結果的にダムは越流侵食を受けた可能性が高い。幸運であったと言えよう」と結ばれています。
2010年11月25日の日記の、荒砥沢ダムの部分はこの記述をうけて書いたものです。
上記文書には、過去の地すべり、今回の大規模地すべりを書き入れた地図と、航空写真「荒砥沢ダム貯水池と後方の地すべり(朝日航洋撮影)」も添えられ、たいへん興味深い内容です。
また、同研究所は2008年7月5〜7日に行った実地調査に基づく「2008年岩手・宮城地震による地すべり調査結果報告」(PDF)も公開しています。
この報告では、地図、現地写真、航空レーザー測量による陰影図、模式図などを使い、より詳しい調査報告となっています。こちらでは荒砥沢の地すべりだけではなく、祭畤(まつるべ)の断層や落橋の様子なども報告されています。